計測・試験用, 制御用, 及びラボ用機器のEMC | IEC 61326-1について

EMC

計測・試験用, 制御用, 及びラボ用機器におけるEMC規格の IEC 61326-1: 2020についての解説記事になります。

※本記事に記載の情報は内容を保証するものではありませんので詳細は規格や法規原文をご確認ください。

IEC 61326-1: 2020:
Electrical equipment for measurement, control and laboratory use – EMC requirements – Part 1: General requirements
計測用,制御用及び試験室用の電気装置 − 電磁両立性要求事項−第1部:一般要求事項 

  1. 概要・適用範囲
    1. この規格でカバーされる範囲 ※1
      1. 計測及び試験用の電気機器 (Electrical measurement and test equipment)
      2. 制御用の電気装置 (Electrical control equipment)
      3. 体外診断 (IVD) 医療機器を含むラボ用の電気機器(Electrical LABORATORY equipment, including In Vitro Diagnostic (IVD) medical equipment)
      4. その他 機器
  2. 機器の分類
    1. エミッションにおける分類
      1. 高周波エミッションの分類 (CISPR 11:2015/AMD1:2016/AMD2:2019によって規定)
        1. クラスによる分類
        2. グループによる分類
      2. 低周波エミッションの分類
        1. 1相あたり16A以下の機器で低圧商用電源(public low-voltage distribution systems)に接続される機器 ※2
        2. 1相あたり16Aを超75A以下の機器で低圧商用電源(public low-voltage distribution systems)に接続される機器 ※2
  3. イミュニティにおける分類
    1. 基本的電磁環境 (BASIC ELECTROMAGNETIC ENVIRONMENT)
    2. 工業的電磁環境(INDUSTRIAL ELECTROMAGNETIC ENVIRONMENT)
    3. 管理された電磁環境(CONTROLLED ELECTROMAGNETIC ENVIRONMENT)
    4. バッテリまたは測定対象の回路から電源供給を受ける可搬形の試験及び計測用の電気機器(PORTABLE TEST AND MEASUREMENT EQUIPMENT powered by battery or from the circuit being measured)
  4. EMC試験計画書
    1. EUTの構成
    2. EUTの動作条件
    3. 性能判定基準
      1. 性能判定基準 A
      2. 性能判定基準 B
      3. 性能判定基準 C
    4. EMC試験に関する事項 
  5. エミッションの要求事項
  6. イミュニティの要求事項
  7. EMC試験結果及び報告書
  8. マニュアル要件
  9. その他
    1. 偶発性に関して
    2. 電磁両立性のリスクアセスメント
      1. 一般 (Annex B.1)
      2. リスク分析 (Annex B.2)
      3. リスクアセスメント (Annex B.3)
    3. 参考規格
    4. 参考にしたHP及び資料

概要・適用範囲

IEC 61326-1: 2020は, AC1000V未満もしくはDC 1500V未満の,電源もしくはバッテリーまたは測定対象の回路で動作する電気機器のイミュニティ及びエミッションの要求事項について規定されたEMC規格となります。

この規格でカバーされる範囲 ※1

この規格は工業用計測分野,工業プロセス分野,工業製造分野及び教育分野における電気機器で,工業環境または非工業環境での使用が意図された以下のような機器及び計算機器(Computing devices)に適用されます。

計測及び試験用の電気機器 (Electrical measurement and test equipment)

電気的手段によって,一つ以上の電気量又は非電気量を計測,表示又は記録する機器,また,信号発生器,計測用標準器,電源およびトランスデューサのような非計測装置も含まれる。

制御用の電気装置 (Electrical control equipment)

手動設定,ローカルもしくはリモートのプログラミング,または一つ以上の入力変数から決定される個々の設定値によって,一つ以上の出力量を特定の値に制御する機器。
また,次のような機器で構成する工業用プロセス計測制御(IPMC)装置を含む。
・プロセスコントローラ及びレギュレータ,
・プログラマブルコントローラ,
・機器及びシステムのための電源ユニット,
・アナログまたはデジタル表示器及び記録機器,
・プロセス計測器,
・トランスデューサ,ポジショナ,インテリジェント アクチュエータなど

体外診断 (IVD) 医療機器を含むラボ用の電気機器(Electrical LABORATORY equipment, including In Vitro Diagnostic (IVD) medical equipment)

ラボ用の電気機器は,物質を測定,表示,監視若しくは分析する装置,又は材料を前処理するために使用する装置である。ラボ以外の場所でも使用することがある。

その他 機器

・上記機器と一緒に使用することを意図したアクセサリ
・上記の機器で無線通信などの無線機能を持つ部品を装備している場合

※1: IEC 61326-1はカバーされる範囲内のすべての機器に一般的に適用されるEMC要件を指定しています。そのため, 特定の種類の機器はその他の関連する個別規格(IEC 61326-2シリーズ)や該当する製品規格がある場合は併せて他規格の要件にも従う必要があります。

機器の分類

この規格内ではエミッションとイミュニティにおいて以下のように機器を分類しており, 該当する分類によって測定要求と試験レベルが異なってきます。

エミッションにおける分類

エミッションは機器の使用が意図される環境によって高周波エミッションと低周波エミッションの測定が要求されております。
高周波エミッションはCISPR 11:2015/AMD1:2016/AMD2:2019の規定に従い適用可能なグループ及びクラスごとに分類し, 限度値を決定します。

また, 機器が低圧商用電源に接続される場合はIEC 61000-3-2:2018, IEC 61000-3-3:2013/AMD1:2017, IEC 61000-3-11:2017, IEC 61000-3-12:2011の規定に従い低周波エミッションの測定(電源高調波電流, 電圧変動・フリッカ)が必要になります。

高周波エミッションの分類 (CISPR 11:2015/AMD1:2016/AMD2:2019によって規定)

クラスによる分類

・クラス A機器 (Class A equipment)
家庭用の施設及び住居用に使用する目的の建造物に給電する低電圧電力系統に直接接続する施設以外の全ての施設での使用に適した装置

・クラス B 機器 (Class B equipment)
家庭用の施設及び住居用に使用する目的の建造物に給電する低電圧電力系統に直接接続する施設での使用に適した装置

グループによる分類

・グループ 1 機器 (Group 1 equipment)
グループ 1 は, グループ 2 機器として分類されていない機器が含まれる。

例: 信号発生器, スペクトラム・アナライザ, 電子顕微鏡, 電力変換器, アーク炉, X 線診断機器, CT, 超音波診断器/治療器, 超音波洗浄器,など

・グループ 2 機器 (Group 2 equipment)
グループ 2 は, 材料の処理, 検査/分析目, または電磁エネルギーの伝送のために, 9 kHz ~ 400 GHz の周波数範囲の無線周波数エネルギーを, 電磁放射, 誘導結合および/または容量性結合の形で意図的に生成され, 使用されるか, または局所的にのみ使用されるすべての ISM RF 機器が含まれる。

例: マイクロ波照明, 誘導加熱装置, 非接触給電, 電子レンジ, 工業用マイクロ波加熱装置, 短波ジアテルミー装置, マイクロ波治療器, MRI, 高周波手術器 (電気メスなど), 放電加工機 (EDM), アーク溶接機, 抵抗溶接機, など

低周波エミッションの分類

1相あたり16A以下の機器で低圧商用電源(public low-voltage distribution systems)に接続される機器 ※2

下記規格に従い測定を実施する。
・IEC 61000-3-2による電源高調波電流の測定
・IEC 61000-3-3による電圧変動・フリッカの測定

1相あたり16Aを超75A以下の機器で低圧商用電源(public low-voltage distribution systems)に接続される機器 ※2

下記規格に従い測定を実施する。
・IEC 61000-3-12による電源高調波電流の測定
・IEC 61000-3-11による電圧変動・フリッカの測定

※2: 低圧商用電源(public low-voltage distribution systems)について
上記規格内では定義について言及されていませんが, 一般共通規格であるIEC 61000-6-3, IEC 61000-6-1には以下定義の記載があります。

・IEC 61000-6-3: 2020 , 3.1.5項より抜粋
public mains network
electricity lines to which all categories of consumers have access and which are operated by a supply or distribution undertaking for the purpose of supplying electrical energy

・IEC 61000-6-1: 2016, 3.5項より抜粋
public mains network
electricity lines to which all categories of consumers have access and which are operated by an electrical power supply and/or distribution organization for the purpose of supplying electrical energy

イミュニティにおける分類

機器の使用が意図される電磁環境によって以下のように4分類されており, 適用する電磁環境により要求されるレベルが異なります。
(この規格内では3分類となりますが, Annex Aで言及されている可搬形の要求も含めて便宜上4分類しています。)

基本的電磁環境 (BASIC ELECTROMAGNETIC ENVIRONMENT)

商用電源から,低電圧で直接供給することによって特徴付けられる場所にある環境。 

・ 居住用建築物,例えば,住宅,アパート 
・ 商業用店舗,例えば,小売店,スーパーマーケット 
・ 業務施設,例えば,事務所,銀行 
・ 娯楽施設,例えば,映画館,飲食店,ダンスホール 
・ 屋外施設,例えば,ガソリンスタンド,駐車場,遊園地,スポーツセンター 
・ 軽工業施設,例えば,作業所,研究所,サービスセンター  等

工業的電磁環境(INDUSTRIAL ELECTROMAGNETIC ENVIRONMENT)

一般的に,高電圧又は中電圧の変圧器から電力の供給を受け,工場又は類似のプラントに給電するために専用の設備がある独立した電力系統をもち,かつ,次の条件の一つ以上が該当する環境。
・ 誘導性又は容量性の重負荷の頻繁な切換
・ 大電流,及びそれに起因する磁界
・ 工業,科学及び医療(ISM)装置(例えば,溶接機)の存在

管理された電磁環境(CONTROLLED ELECTROMAGNETIC ENVIRONMENT)

装置の使用者が電磁環境を理解し,設置の方法を管理することによって特徴付けられた環境。このような環境には,通常,無停電電源装置(UPS),フィルタ,サージ抑制器などによる保護が必要となる装置が存在し, 従事する要員は,試験結果を解釈できるように訓練されている。

・ 分析,試験及びサービスのための試験室

試験室(laboratory)の定義 
分析,試験及びサービスのために特別に使用し,かつ,訓練された要員が装置を操作する区域。

バッテリまたは測定対象の回路から電源供給を受ける可搬形の試験及び計測用の電気機器(PORTABLE TEST AND MEASUREMENT EQUIPMENT powered by battery or from the circuit being measured)

バッテリ又は測定対象の回路から電源供給を受ける, 容易に運搬でき,使用者によって接続又は取り外せるように設計された可搬形の試験及び計測用の電気装置に適用される。(但し, 充電中に動作できる機器は,この範囲から除外される。)
例 
・ デジタルマルチメータ,独立形電流クランプ等

得られた結果を解釈できる専門家が,測定の短い間だけ使用することを意図している装置が含まれるが, 通常長時間の測定に使用するための監視装置,制御装置,電力測定器,オシロスコープなどの機器は含まれない。

EMC試験計画書

EMC試験計画書は,試験実施前に立案され, 少なくとも下記内容を含める必要があります。

EUTの構成

内部及び外部の構成が変化するEUTは,意図した環境において製造業者が指定する, 使用を代表する 1つ以上の最も典型的な構成で試験する。
全ての種類のモジュールは,1回以上,試験を行う。同一タイプのI/Oポートが複数ある場合,他のケーブルを追加接続することによって試験結果に大きく影響しないことを示すことができる場合は,その一つのポートにケーブルを接続して試験するだけでもよい。 
EUTとともに種々の補助装置を使用する場合には, 実際の動作状態を模擬するために, それぞれの種類に対して一つ以上の補助装置を選択する。補助装置は模擬してもいい。
ケーブル及び接地は,製造業者の仕様に従ってEUTに接続し, 追加の接地接続は行わない。 
試験で使用する機器, ラック, モジュール, ソフトウェアとそのバージョン, ケーブルなど, それらの接続, 構成の選択の根拠を試験計画書に文書化する。

EUTの動作条件

動作モードは通常の用途で推定できる最悪条件を選択する。環境条件は製造業者が指定する環境(例えば,周囲温度,湿度,大気圧)での動作範囲内,並びに供給電源電圧及び電源周波数の定格範囲内で行う。但し IEC 61000-4-2 (静電気放電試験) の環境条件の規定はこれに優先する。動作モードを模擬するために使用するソフトウェアは,文書化し,このソフトウェアは,通常の用途で推定できる最悪の動作モードを模擬する。

性能判定基準

イミュニティ試験では, 各動作モード及び試験の機能性能は, 可能なら定量的に指定する。
電磁妨害によって意図しない状態変化が発生する可能性がある場合, “スタンバイ”, “バッテリ充電”などの非動作状態についても指定しなければならない。それらが不可能な場合は, それが正当であることの裏付けとともに機能性能を試験計画に記載することが望ましい。

イミュニティ試験結果の評価に関する一般原則 (性能基準) は次のとおりとなります。また許容される性能低下がある場合, 試験前の試験計画書で指定され, 製品仕様で使用者に明確に提供されている場合にのみ許可されます。(製品の使用者向け文書などの文書を通じて最終使用者に明確に許容される性能低下についての情報を提供しなければなりません。)

性能判定基準 A

機器は, 試験中および試験後に意図したとおりに動作を継続しなければならない。機器が意図したとおりに使用される場合, 使用者向け文書で指定された性能レベルを下回る性能の低下や機能喪失があってはならない。連続的な電磁現象を伴うイミュニティ試験を適用する場合, 性能レベルは, 使用者の関与なしに復帰する許容可能な性能喪失に置き換えてもよい。許容可能な性能低下は, この情報が製品の使用者向け文書などの文書を通じて最終使用者に明確に提供される場合にのみ, 性能レベル内で許容される。動作状態の変化やデータの喪失は許容されない。

性能判定基準 B

機器は, 試験後に意図する動作を継続しなければならない。機器が意図したとおりに使用されている場合, 使用者向け文書で指定された性能レベルを下回る性能の低下や機能喪失があってはならない。試験中, EMC試験計画書にそのような性能の喪失が詳細に記載されている場合, 機器の性能レベルは許容される性能喪失に置き換えてもよい。許容可能な性能の低下は, この情報が製品の使用者向け文書などの文書を通じて最終使用者に明確に提供されている場合にのみ, 性能レベル内で許容される。自己復帰する場合は, 動作状態の想定されない変化は, あってもよい。保存データの喪失はあってはならない。

以下は, 性能判定基準 B の例:
•データ転送がパリティ チェックやその他の手段によって制御または検査している。サージ インパルスなどによって生じる転送誤りの場合, そのデータの転送は自動的に繰り返される。この時にデータ転送速度の低下があってもよい。
•試験中, アナログ値が指定された制限を超える場合がある, 試験後, その変動は消失する。
•マンマシンモニタリングのみに使用されるモニタの場合, バースト インパルス印加中の一時的な表示上の干渉のような, ある程度の劣化を許容できる。

性能判定基準 C

機能が自己復帰または制御部の操作によって復帰可能な場合は, 機能の喪失があってもよい。復帰手順は使用者向け文書に記載する必要がある。機器に恒久的な損傷はあってはならない。

以下は, 性能判定基準 C の例:
•指定されたバッファ時間を超える主電源の中断により, 機器の電源ユニットがオフになる場合がある。この場合, 電源オンは自動的に行われるか, オペレータによって投入してもよい。
•妨害によって引き起こされたプログラムの中断の後, 機器のプロセッサの機能は規定された状態で停止し, “クラッシュ状態”のままにならない。この場合, オペレータの操作が必要な場合がある。
•試験の結果, 過電流保護機器が動作した場合, これはオペレータがリセットすることができる。

EMC試験に関する事項 

適用する試験項目を,それぞれEMC試験計画で指定する。
EMC試験計画は,詳細な実施方法の指定, 実際の試験の実施のための追加の情報を指定しなければならない場合がある。(一般的には試験項目と適用レベル, 参照した試験規格, 試験を適用するポート, 試験対象外とした場合は判断の技術的な根拠などが記載されています。) 

エミッションの要求事項

IEC 61326-1内ではエミッションの要求については以下が適用されます。

・グループ1 クラスA機器
CISPR 11:2015/AMD1:2016/AMD2:2019に記載された限度, 測定方法, および規定を適用。
・グループ2 クラスA機器
CISPR 11:2015/AMD1:2016/AMD2:2019に記載された限度, 測定方法, および規定を適用。

・グループ1 クラスB機器
CISPR 11:2015/AMD1:2016/AMD2:2019に記載された限度, 測定方法, および規定を適用。
・グループ2 クラスB機器
CISPR 11:2015/AMD1:2016/AMD2:2019に記載された限度, 測定方法, および規定を適用。
さらに, 入力電流が16AまでのクラスB機器については, IEC 61000-3-2:2018およびIEC 61000-3-3:2013/AMD1:2017を適用。入力電流が相ごとに75Aまでのものについては, IEC 61000-3-11:2017および IEC 61000-3-12:2011を適用。

表1: エミッションの測定要求 概要

※3: 400MHz を超える周波数で動作するグループ 2 機器に対して適用される。
※4: 機器が低圧商用電源に接続される場合はクラスA機器であっても高調波電流・電圧変動, フリッカの測定が必要となります。

イミュニティの要求事項

IEC 61326-1内のイミュニティの要求は下記になります。適用する環境レベルに応じて試験レベルが異なります。

表2: 基本的電磁環境での使用を意図した装置のイミュニティ試験要求事項

表3: 工業的電磁環境での使用を意図した装置のイミュニティ試験要求事項

表4: 管理された電磁環境での使用を意図した装置のイミュニティ試験要求事項

表5: 電池又は測定対象の回路から電源供給を受ける可搬形の試験及び計測用の
電気装置に対するイミュニティ試験要求事項

・電磁環境に関しての補足事項
※5: 機器の性質や使用状況および設置環境などによっては, この規格でカバーされない妨害の影響を考慮して, 規定されたイミュニティ試験レベルよりも高いレベルの妨害の影響の考慮も必要となることがあります。特に無線周波伝導妨害試験は工業向けの一般イミュニティ規格であるIEC 61000-6-2よりも低いレベルが採用されているため, 一般イミュニティ規格向けの環境相当での使用, もしくは工業向け製品と組み合わせて使用する機器またはIEC 61000-4-6のような基本規格で定義されたクラス3相当での使用を意図された機器はより高いレベルでの試験を選択することを考慮してもよいかと思われます。

・IEC 61000-6-2: 2016における工業地域の定義
工業地域(industrial location) 
工業設備向け配電設備専用の高圧変圧器又は中圧変圧器から供給される独立の配電系統によって特徴付けられた地域。 

例 金属加工工場,パルプ・紙工場,化学プラント,自動車生産工場,農舎,空港の高圧エリア 
注記1 工業地域は一般に,次の一つ以上の特徴をもつ設備の存在によって記載できる。 
・ 複数台設置され,相互接続し同期して動いている一連の装置(例えば,生産設備) 
・ 極めて大きい発電,送電及び/又は消費電力量 
・ 誘導性又は容量性重負荷の頻繁な開閉 
・ 大電流及びそれに起因する磁界 
・ 高出力の工業,科学及び医療用(ISM)装置(例えば,溶接機) 

工業地域の電磁環境は,その地域に存在する装置及び設備によって主に生み出される。特定の電磁現象が,他の設備よりも大きい工業地域がある。

・IEC 61000-4-6における試験レベルを選択するための指針 (附属書C)
クラス1 (1V):
低レベル電磁放射環境。ラジオ送信所及びテレビ送信所が1kmよりも遠い距離にある場合の典型的なレベル及び低電力トランシーバの典型的なレベル。 
クラス2 (3V):
中程度の電磁放射環境。低電力可搬形トランシーバ(一般的には定格電力1W未満)を用いるが,装置の近傍での使用を制限する。典型的な商業環境。 
クラス3 (10V):
厳しい電磁放射環境。可搬形トランシーバ(一般的には2W以上)を装置の比較的近くで用いるが,1m未満の距離には接近しない。大電力放送用送信機が装置に近接,又は工業・科学・医療(ISM)装置が近くにある。典型的な工業環境。

EMC試験結果及び報告書

試験結果は,試験の再現性の観点から詳細内容を記載した,理解しやすい形で試験報告書にまとめることが求められています。

試験報告書へは,少なくとも次に示す情報を含める必要があります。 
・ EUTの説明 (EUTの識別情報を含める)
・ 試験施設の名称及び所在地
・ EMC試験計画 
・ 試験要求事項,例えば電磁環境の分類 
・ 性能評価基準 
・ 試験データ及び結果 
・ 適用可能な場合,試験中に発生した, 機能性能から逸脱する装置の動作の特性
・ EUTに適した変更(ある場合)
・ 試験装置及び試験セットアップ 

マニュアル要件

IEC 61326-1の9項に使用者向け文書への要求事項の記載があります。
使用者向け文書には, 他の必要な情報とともに, 少なくとも以下の情報を記載しなければなりません。

• 使用が意図された電磁環境
• 適用された規格
• 試験対象物に接続された時にエミッション限度を超えるエミッションを生じるかも知れない旨
• イミュニティ条件下で許容可能な性能の喪失が許容される場合はそのレベル

※6: 使用者向け文書には上記の項目以外にも他の適用規格や参照先規格および適用した指令(例 EMC指令)などが要求する文書要件の項目も記載が必要となります。

その他

以下補足情報となります。

偶発性に関して

IEC 61326-1の6.3項に偶発性の側面について言及されています。

各試験の持続時間及び/又は試験回数は,性能評価基準が常に満たされるように十分でなければならない。偶発的な影響(例えば,試験での印加とEUTの動作との間の時間的関係の結果)によって誤って試験に合格させないように注意しなければならない。※7
偶発的な影響を排除するため例
・静電気放電試験の場合
各極性,試験箇所及び試験レベルごとに10回以上,EUTに放電することが望ましい。
・バースト試験の場合
試験時間を延長して,1分を超えて試験してもよい。

※7: これは,ソフトウェア又はファームウェアによって,指定又は制御することができる機能を備えたEUTに対して特に関係している。 

電磁両立性のリスクアセスメント

IEC 61326-1 Annex Bでは, 参考(informative)情報として電磁両立性のリスク分析およびリスクアセスメントに関する指針が記載されております。エミッションおよびイミュニティに関してこの規格内で規定されている適切なカテゴリを選択することおよび指定された要件が十分な電磁両立性を保証できないリスクを考慮して追加のリスクアセスメントを行うことが推奨されています。

以下 Annex Bの概要になります。

一般 (Annex B.1)

B.1ではIEC 61326-1内で説明されている製品群に対するEMC要件をこの規格内で提供することにより, 機器から発生するエミッションおよび機器が達成すべきイミュニティに関する要件について確認できるとされています。 しかし, 実際の設置環境ではこの規格の対象となる機器を運用する際, 指定された要件が十分な電磁両立性を保証できないリスクもまた存在すると言及されています。

リスク分析 (Annex B.2)

B.2ではリスク分析の結果が提供されています。
この規格の対象となる機器が, 他の機器やシステムに対して電磁両立性に影響を及ぼすリスクについて分析した結果, 以下の2つの状況が特定されています。
a) 機器から発生する電磁干渉が, 無線通信機器, または他の機器が意図した通りに動作できないレベルを超えてしまう。
b) 機器がその設置環境で予想される電磁干渉に対して十分な耐性を持っておらず, そのため意図された機能が許容できない程度に悪化する。

リスクアセスメント (Annex B.3)

B.3ではリスク分析の結果へ対処するための要件と追加のリスクアセスメントの必要性についての記載となります。
上記a), b)のリスクに対処するため, この規格の対象となる機器に対して要件が規定されています。これらの要求事項は, 上記の2つの状況の発生を最小限に抑えることを目的としております。

・エミッションの要件
機器が使用される場所に基づいて機器を分類するという確立されたアプローチに従っています。この規格は, CISPR 11で定義された機器カテゴリーに基づき, クラスA機器とクラスB機器を区別します。機器のカテゴリーとその使用場所との間の割り当てが適切であれば, この規格に適用される機器にとって適切であるとされています。

・イミュニティの要件
この規格内では3つのイミュニティ試験レベルと性能基準が, 機器が使用される電磁環境(基本的, 工業用, 管理された環境)に応じて規定されています。これらの3つのセットは, 考慮される電磁環境に関連する電磁現象に対するイミュニティを扱っています。

このリスクアセスメントは, この規格でカバーされている電磁環境に適用されます。ただし, 稀にここでカバーされていない電磁現象が発生する設備や, この規格で考慮されたものとは異なる電磁環境が存在する場合があることに留意する必要があります。したがって, 製造業者は, 機器がそのような条件下に設置される可能性を確認し, この一般的なリスクアセスメントをより具体的なもので特定のリスクアセスメントを補完することが推奨されている。

参考規格

IEC 61326 シリーズには以下個別の規格またPLC向けの製品規格が存在します。該当する場合は以下のような規格を IEC 61326-1と組み合わせて適用することになります。

IEC 61326 シリーズ
• IEC 61326-2-1 – EMC 保護されない用途のための敏感な試験/測定機器
• IEC 61326-2-2 – 低圧配電システムでの使用のためのポータブル試験, 測定, 及び監視機器
• IEC 61326-2-3 – 組み込みあるいは遠隔のシグナル・コンディショニングを持つトランスジューサ
• IEC 61326-2-4 – IEC 61557-8 に従った絶縁 監視デバイス、及び IEC 61557-9 に従った絶 縁故障位置特定
• IEC 61326-2-5 – IEC 61784-1 に従ったフィー ルド・バス・インターフェースを持つフィール ド・デバイス
• IEC 61326-2-6 – 体外診断 (IVD) 医療機器
• IEC 61326-3-1 – 安全関連システムと安全関連 機能の実行が意図された機器 (一般産業用途)
• IEC 61326-3-2 – 安全関連システムと安全関 連機能の実行が意図された機器 (特定の電磁環 境の産業用途)

PLC個別の製品規格
・IEC 61131-2 – プログラマブルコントローラ− 装置への要求事項及び試験

参考にしたHP及び資料

以下資料およびサイト様情報を参考にさせていただきました。

・e・オータマ 出典資料
https://www.emc-ohtama.jp/emc/doc/iec61326-1-explained.pdf
https://www.emc-ohtama.jp/emc/doc/iec61000-3-2explained.pdf
https://www.emc-ohtama.jp/emc/doc/iec61000-3-3-explained.pdf
https://www.emc-ohtama.jp/emc/doc/cispr11-explained.pdf
https://www.emc-ohtama.jp/emc/doc/iec61131-2-explained.pdf

・株式会社フジセーフティ・サポート, HP
https://fujisafety.jp/case.html#a01_20220329

・EMC &Safety Technical Consultant Japan, HP
https://estcj.com/overview-of-emc-standards-iec-61326-1-for-measurement-control-and-laboratory-equipmentiec

・IEC 61326-1, iTeh Stanards, preview
https://cdn.standards.iteh.ai/samples/101977/104f40be88de493d8f12852106314196/IEC-61326-1-2020.pdf

・JIS, HP
https://www.jisc.go.jp/index.html

・JIS規格, JIS C 61000-6-2
https://kikakurui.com/c60/C61000-6-2-2019-01.html

・JIS規格, JIS C 61000-4-6
https://kikakurui.com/c60/C61326-1-2017-01.html

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